A legacy

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「あれだよ。」と指差す方を見ると、100年以上経った農家を改築したという
彼の自宅兼オフィスがありました。最初に案内してくれた2階のオフィスの
窓から見えたのは、美しい木立の小さな森と、手前の芝生でのんびりと草を
食む羊たち。。。

「ここが僕のデザインの “Heart”。まさしく心臓なんだ。
ここから生まれるんだよ。」

Carafe立ち上げの頃、視察で偶然訪れたアムステルダムのショールームでピラートの
テーブルに一目惚れし、後日改めて渡蘭した際にピラート氏と一緒にアムスから
車で4時間の彼のヘッドクォーターに招かれ話を聞いたときの彼の力強い眼差しは
今でも覚えています。あれからもう16年。ピラート氏が無垢の木に注ぐ愛情は決して
褪せることなく進化を続け、触れる度に安心感を覚える木肌の美しさに加えて今尚
新鮮で知的なユーモアを感じるデザインを生み出してます。改めて彼に出会えて
良かった、、と大らかな「家具力」の力に包まれつつこの年月を振り返る今日
この頃です。今でこそ節があったり不揃いな木目を活かした無垢の天板のテーブルや
家具が日本でも普通に出回るようになりました。ここ数年の流行でもある
インダストリアルなインテリアがリノベーション・ブームとともに市民権を得たと
いうのが大きな要因でしょうか。しかし敢えて言えば、同じ無垢材といっても
ピラートの家具はそれとは一線を画すものです。
無垢材の個性を活かしつつ、オランダの深い歴史観の上に築きあげた現代的感性、
人生に対する大らかで力強い愛情、、、。道具である家具という枠を超えた何かを
感じることができるピラートの製品は、自分の生き方を選ぶのと同じような奥深い
輝きを持っています。はじめから使い古した「ような」加工を施すのではなく、
人との暮らしとともに少しずつ経年変化を楽しみ、10年、20年、30年後、、
そしてもっと先の人生でも傍らに在り、時代に合わせて変化しながら静かに
見守ってくれるようなもの。

大げさかも知れませんが、ピラートの家具に触れてみると(そして実際触れて
みたくなるのですが)、そんな存在になってくれような気がするのです。16年前に
出会った我が家のテーブルも、長年使ってついた傷やシミさえも家族の過ごした
記録として愛おしくなるばかりで、古臭さを感じるどころか益々良くなってきて
います。ソープ・フィニッシュの無垢材の木口は二つとして同じ柄はなく、微かに
ざらついた手触りが自然そのもので五感に響きます。

あと何十年か使ったら、私達にとってはまた価値が高まって家宝となり、息子に
引き継げたら嬉しいですね。親のエゴですがそれがささやかな願いです。重くて
移動は大変ですが(笑)。家は売ってもいいからテーブルは使ってね、なんて。

『Pilat&Pilat 新着家具と木製小物展』
7月8日(土) ~7月23日(日)
於 Carafe (11:00~19:00 / Closed on Wed.&Thus.)

*ピラートとの出会いについては過去のブログでも書かせていただいています。

http://carafediary.jugem.jp/?eid=14

 

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